■レビュー
九戸政実は、東北は岩手県北部を支配していた南部家の武将で、九戸城の城主でした。
「九戸(くのへ)」と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、「八戸(はちのへ)」といえば何となく青森県のあたりを思い浮かべる方が多いかと思います。
南部家一族には一戸氏、二戸氏、三戸氏・・・と九戸氏まであり、それぞれ城を持っていて地名にもなっています。よく出てくる武将は、七戸家国・八戸政栄・九戸政実/実親兄弟あたりでしょうか。ちなみに南部家の本家は三戸(さんのへ)城です。九戸城は二戸市にあります(ややこしい・・・)。
九戸政実率いる九戸党(くのへとう)は南部家きっての戦闘集団で、特に軍事面で南部家を支える柱です。
政実は、信長・秀吉が中央から勢力を伸ばしていることに危機感を覚え、少しでも南部家の勢力を拡大しようとしますが、南部本家は青森・岩手の領地で満足し、事なかれ主義を貫こうとするため、しばしば本家と衝突します。
政実は、一戦も交えず秀吉の支配に屈した南部本家に反旗を翻し、わずか千五百の兵で九戸城に立て籠もり、豊臣家重臣の蒲生氏郷率いる10万の「奥州再仕置軍」を迎え撃ちます。
果たして、九戸政実は10万の秀吉軍に勝利することができるのか!?
この本のおススメなところは、「九戸政実の乱」があまりにも無名なため、結末を知らないところです。
歴史ファンの方が歴史小説を読む場合、おおかた結末を知っているケースが多いと思います。
もちろん途中経過は楽しめるのですが、結末を知ってしまっているのがなんとも虚しくなることがあるかと思います。
ぜひ本書を読む際は、Wikipediaなどであらかじめ結末を調べずに読んでいただきたいと思います(笑)
もちろん結末を知っている方も、躍動感あふれる九戸党の戦ぶりを存分に堪能していただければと思います。
戦国時代といっても、三国志などと違って一般的な戦争のスタイルは近代戦・組織戦なので、兵力の多寡が勝敗を分けます。よって、司馬遼太郎三部作といわれる「国盗り物語」「太閤記」「関ヶ原」などの小説では、合戦の前に、相手方を調略で寝返らせることによりいかに自軍の兵力を増やすかに重点が置かれています。
しかし、本書で描かれる九戸政実の戦は、騎馬兵を用いた奇襲作戦が中心で、ハラハラドキドキの戦の駆け引きを味わうことができます。
「幼少期」のような退屈なシーンも一切なく、しょっぱなから秋田の安東家に奪われた長牛城を政実が奪還する話から始まるのも良いところです。
東北地方の方でなければ、地名だけは全然分からないと思うのでスマホのGoogleマップを片手にどうぞ。
(Googleマップの設定で「地形表示ON」にしておくと奇襲作戦の妙がより楽しめます)
- 書籍名 天を衝く
- 著者名 高橋克彦
~戦国書籍として~
- 歴史に浸れる度 ★★★★★(迫力ある合戦シーンや駆け引きが堪能できます)
- 他では見れない度 ★★★★★(数少ない東北地方の戦国小説)
- 総合評価 ★★★★★
- 分かりやすさ度 ★★★★★(読書習慣の無い方も一気に読めます)
- 女性と読める度 ★★☆☆☆(男性向きの小説かと・・・)
- 総合評価 ★★★★☆
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