山岡荘八著「徳川家康」 ~ギネス最長記録の戦国超大作

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■レビュー

ご存知、秀吉亡き後の日本を統一して江戸幕府を開き、その後250年続く泰平の世の基礎を築いた「徳川家康」の一生を描いた作品です。

徳川家康の生まれたのは、まだ織田信長も幼少期であり、まだまだ武田信玄・上杉謙信・北条氏康などの戦国の英雄がしのぎを削っていた時期なので、戦国時代の全体像を理解する入門書としても推奨される本書ですが、なんとこの小説は全26巻もあります。

本を横に並べると60㎝ほどもあります。
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戦国小説として最も有名な司馬遼太郎の「国盗り物語」を初めて読んだときは結構長編だと感じましたが、並べて比べるとこの通り、全26巻は途方もない長さです。
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400字詰め原稿用紙約17400枚という長さで、ギネスブックにおいて「世界最長の小説」に記録されています。

家康の没年齢が75歳なので、だいたい3年分を一冊にまとめているというところでしょうか。

管理人は、寝る前にベッドで20分程度読書して寝るのが習慣ですが、それでも本書を読破するのに1年以上の歳月が掛かりました。ちょっとずつ読んでいると、前の方のストーリーをどんどん忘れていくので結構大変です。(しかし、読むのはまだ楽でも、書いた荘八さんは想像を絶するほど大変だっただろうな~。。)

というわけで、戦国時代のスケールを肌で感じることのできるとてもおススメの書籍です。
また、少しずつ読めば1年はもつので非常にコスパが良い書籍だと思います(笑)
(Amazonの中古だったら結構安く買えます)

山岡荘八作品は全体的に小難しいといわれますが、本書は巻ごとのはじめに、その巻で出てくる合戦の図や大名の系譜などが図解されていて、見比べながら読むと頭に入ってきやすいのが良いです。
初心者の方でも、戦国時代の流れを理解しながら読み進めることができるでしょう。

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少ないですが、挿絵も入っていてイメージの手助けをしてくれます。
↓は竹千代(家康の幼名)が今川家の人質時代に、義元への年賀挨拶の席で立ち小便をするという有名なシーン。
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本書は山岡荘八が、戦時中に従軍作家として第二次大戦を経験し、戦後の焼け野原を肌で体感してきたことから、著者が「徳川家康」という人物を世界平和の象徴に見立てて描いています。
(「はじめに」でそのあたりの断り書きがあります)

なので、家康の思考回路は常に「平和」を求める流れになっていて、例えば、大阪の陣についても最後まで秀頼との共存を模索したが、万策尽きて合戦に至る、という書き方になっています。
(実際は、徳川江戸幕府の日本に豊臣家が残る影響力を恐れて、方広寺の鐘銘に因縁をつけて攻め滅ぼしたんでしょうけど)

一般的な歴史では「タヌキ親父」として評される腹黒い家康像を期待して読まれる方には、あまりに家康が聖人君子すぎて少し物足りないと感じるかもしれません。

あと、本書はすべてにおいて事実より思考に重点を置いて描かれています。
なので、大名同士の駆け引きや家臣とのやり取りについても、家康や家臣がどのように思考して結論に至るかというプロセスが「これでもか!」というほど描写されています。家康家臣の思考の浅さについて家康が説教するシーンもふんだんに出てきます。

逆に合戦シーンなどは、非常にあっさりと描かれています。激戦に川が血に染まったといわれる姉川の戦いなんかでも本書では本当に一瞬で過ぎ去ってしまいます。
戦国時代の血で血を洗う合戦や国盗りを読みたい方は、司馬遼太郎などの本の方がおすすめかもしれません。

つまり、戦国時代を舞台とした駆け引きや思考(及び説教)に重点を置かれた作品で、駆け引きについても利害というよりは治世に重点を置かれているので、少し特殊な小説かと思います。

本書はビジネスマンにお薦めの書としても有名ですが、Win-Winの結論に至る思考プロセスやマネジメントを学ぶという点では非常に役立つのではないかと思います。

戦国時代について俯瞰しつつ、治世のための知恵を学ぶことのできる管理人おススメの26冊です。



■あわせて巡りたい

・岡崎城
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鉄の結束といわれた三河武士の本拠地です。
本書においても、当主広忠が死去し、嫡男竹千代(家康)が今川家に人質に送られ、崩壊寸前となっていた松平家に竹千代が当主として戻ってくるシーンは、本当に自分のことのように嬉しくなります。
家康が浜松城、江戸城と本拠地を移していく中でも、ここ岡崎城は「神君誕生の地」として徳川家の精神的支柱として残り続けます。
本書を読めば、岡崎城に行きたくなること間違いなしです。

■あわせて観たい

・NHK大河ドラマ「徳川家康」全50話

本書を原作として描かれた映像作品です。
原作26巻に対して50話なので、2冊が1話のペースです。
この時代の作品にしては、今川義元(演 : 成田三樹夫)がしぶくて有能な感じです。
荘八家康ワールドを映像でも楽しみたい方はどうぞ。



■書籍データ

  • 書籍名       徳川家康
  • 著者名       山岡荘八
■管理人の勝手な評価

~戦国書籍として~
  • 歴史に浸れる度   ★★★★☆(もう少し迫力のあるシーンが多いと嬉しい)
  • 他では見れない度  ★★★★☆(少し特殊な小説だとは思います)
  • 総合評価      ★★★★☆
~娯楽として~ 
  • 分かりやすさ度   ★★★☆☆(読書習慣の無い人には少し難解かも?)
  • 女性と読める度   ★★☆☆☆(興味が無いとキツイと思います)
  • 総合評価      ★★★☆☆

コメント

  1. 鷲谷 壮介 より:

    初めまして、鷲谷と申します。
    自分は山岡荘八氏の『徳川家康』の大ファンでして、今回第4巻についてのブログ記事を書かせていただいたのですが、その際ミハタ=タテハシさんのこちらの記事を参考にさせていただきました。
    この作品を知り合いに進めるときに、その魅力をどうもうまく(とっつきやすく)説明しづらかったのですが、ミハタ=タテハシさんの「家康や家臣がどのように思考して結論に至るかというプロセスが『これでもか!』というほど描写されてい」るという言葉がとてもしっくりきました。
    今後は、その表現をお借りして説明したいと思います!
    それと、誠に勝手ながら自ブログにてミハタ=タテハシさんのこちらの記事のリンクを貼らせていただいたので、ぜひ遊びにいらしてください!
    http://washiya.sapolog.com/e485787.html

  2. 鷲谷 壮介 より:

    初めまして、鷲谷と申します。
    自分は山岡荘八氏の『徳川家康』の大ファンでして、今回第4巻についてのブログ記事を書かせていただいたのですが、その際ミハタ=タテハシさんのこちらの記事を参考にさせていただきました。
    この作品を知り合いに進めるときに、その魅力をどうもうまく(とっつきやすく)説明しづらかったのですが、ミハタ=タテハシさんの「家康や家臣がどのように思考して結論に至るかというプロセスが『これでもか!』というほど描写されてい」るという言葉がとてもしっくりきました。
    今後は、その表現をお借りして説明したいと思います!
    それと、誠に勝手ながら自ブログにてミハタ=タテハシさんのこちらの記事のリンクを貼らせていただいたので、ぜひ遊びにいらしてください!
    http://washiya.sapolog.com/e485787.html

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