千利休屋敷跡 ~戦国時代の陰の功労者・利休の小屋敷跡

■概要

「わび茶」を完成させた日本で最も有名な茶人として知られる「茶聖」千利休の屋敷と伝えられる場所です。

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千利休は、戦国時代後期において、時の権力者であった豊臣秀吉の側近として重用されますが、小田原征伐の後に、自身が住職を務めていた大徳寺の山門の上に自身の像を建て、大徳寺を訪問した秀吉に利休像の下を通らせたということから、秀吉の怒りにふれて切腹に追い込まれました。(といわれていますが、実際のところは良くわかっていません)

ここ堺の千利休屋敷の敷地内には、千利休が使っていた(かもしれない?)「椿の井戸」があります。
当時は、井戸の水を澄ますために椿の炭を底に沈める習いがあったとされています。
また、椿の井戸の再建にあたっては千利休ゆかりの大徳寺の山門の古い木材が使用されています。

<椿の井戸跡>
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■見どころ

戦国時代は、千利休を外して語ることはできません。

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戦国時代は初期においては、国と国との切り取り合戦でしたが、織田信長や豊臣秀吉による天下統一事業の仕上げにあたっては、千利休が完成させた「茶道」がフルに活用されました。

国同士の小競り合いならまだしも、天下統一に向けて軍事行動を続けていくためには途方もない軍需物資や金銭が必要でしたが、領内から徴収される年貢米だけでは限界がありました。

そこで、天下統一をめざす信長が目をつけたのが大阪の「堺」という町です。
当時の堺は、日本全国や海外との交易の一大拠点であり、日本中の富や物資が集中していました。
また、堺は大名たちの支配を受けない自治都市であり、町の周辺には堀が敷かれ、鉄砲による武装もされていました。

信長は堺の商人たちを味方に引き入れるために、商人の間で流行していた「茶」に目を付け、国策として取り上げます。具体的には、支配下から茶道具類を徹底的に召し上げて値段を高騰させます。
やがて、レアものとなった茶器類が権威の象徴となり、そうした「レアもの」を多く所有している信長に名声が集まっていくこととなります。

また、当時茶器類の目利きが出来るのは全国でも堺の商人たちぐらいであったため、千利休をはじめとする堺の商人たちの名声も高まり、さらに明国(中国)などから茶器類を輸入して日本国内で売買する堺の商人たちの利益も大幅に増していくことになります。

こうして信長は自身の権力を高めながら、堺の商人たちの取り込みに成功することで、権威と資金力を背景に、天下統一事業を加速させていくことになります。

<屋敷跡にある千利休碑>
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本能寺の変により志半ばで倒れた信長の天下統一事業を継いだ秀吉は、堺の茶人たちの中から特に千利休を重用し、「北野大茶会」といった大イベントを催すなど、茶道のブームをさらに過熱させ、政治利用を進めていきます。

利休が切腹に追い込まれた原因ははっきりとしていませんが、あくまで茶人として「わび茶」を極めたかった利休と茶道を政治利用したい秀吉が合わなくなっていったのは、想像に難くありません。

余談ですが、日本では飲食店などで「チップ」という概念が無いのは、千利休が始めた茶道が要因ともいわれます。

千利休は「わび茶」を体系化するにあたり、茶室の中では身分や貴賤の差を徹底的に排除することに心を砕きました。例えば、茶室に入るには、体をかがめてとても狭い「躙口(にじりぐち)」を入っていかなければなりませんが、これによりいくら名のある大名であっても帯刀せず、一旦頭を下げながら茶室に入らなければなりません。茶室の中では、すべての客は平等で、金が無くても身分が低くても、公平に心のこもった「おもてなし」を受けることができます。

海外では、チップを払えない客は最低限のサービスすら受けられないこともありますが、代金さえ払えば質の高い接客を受けられる日本文化を作ってきたのは千利休が完成させた茶道によるものです。

こうした戦国時代における天下統一や、日本文化の醸成に陰で大きな貢献を果たした茶人・千利休の小さな屋敷址に思いを馳せましょう。

屋敷址内は想像以上に狭くて、解説などもほとんどありませんが、ボランティアガイドの方が常駐されているので、丁寧な説明を聞くことができます。

屋敷跡の隣には千利休の歴史に触れる「さかい利晶の杜」があり、手軽に茶道体験ができる茶室もあります。興味のある方はあわせてどうぞ。

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■施設データ
  • 施設名       千利休屋敷跡
  • 種別        屋敷跡
  • 登城日       2018年8月11日(土)
  • 住所        堺市堺区宿院町西1丁17-1
  • 電話番号      072-260-4386(さかい利晶の杜)
  • 公式HP      堺観光ガイド
  • 入場料       無料
  • 駐車場       有料・1時間200円(さかい利晶の杜)
  • 所要時間の目安   20分程度
  • 混雑度       小
  • 注意点       特に無し
  ※管理人が登城時の情報です。登城の際は必ず公式HPで最新情報をチェックして下さい。

■管理人の勝手な評価

~歴史スポットとして~
  • 難攻不落度     ★☆☆☆☆(防御性ゼロです)
  • 歴史に浸れる度   ★★☆☆☆(もう少し色々欲しいところです)
  • 他では見れない度  ★★☆☆☆(椿の井戸があります)
  • 総合評価      ★★☆☆☆
~行楽地として~ 
  • アクセス性     ★★★★☆(大阪市内からほど近いです)
  • 散策のしやすさ度  ★★★★★(狭いので一瞬です)
  • 分かりやすさ度   ★★★☆☆(ボランティアガイド頼みです)
  • 景観度       ★☆☆☆☆(景観は特にありません)
  • 女性と行ける度   ★★★☆☆(利晶の杜の茶室とセットで)
  • 総合評価      ★★★☆☆
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