鬼ノ城 ~桃太郎が鬼退治に行った?謎の古代山城

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■概要

岡山県総社市の鬼城山(きのじょうさん)に築かれた朝鮮式の古代山城です。
城に関する当時の書物が残っておらず、築城年や築城者・用途などの詳細が不明の謎に包まれたお城です。

岡山では、「温羅(うら)伝説」というものがあります。大和朝廷の時代に、「温羅」と呼ばれる異国の鬼が吉備国(岡山)の山に居城を構え、西国から都に送る貢物や婦女子を略奪するなど、暴虐の限りを尽くしたと言われています。
そこで朝廷は、「吉備津彦命(きびつひこのみこと)」という武士が派遣され、吉備津彦は三人の兵を連れて鬼の住む砦に向かい、鬼たちを退治したと言われています。ここまで聞いてお気づきかと思いますが、この話があの有名な日本昔話の「桃太郎」の起源になったとご当地岡山では言われています。(温羅=鬼、吉備津彦命=桃太郎、三人の兵=犬・猿・雉)

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そして、鬼ヶ島の舞台と言われているのが、この「鬼ノ城」です。

<鬼ノ城西門(復元)>
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実際は、663年に大和朝廷は朝鮮半島における白村江の戦いで百済(くだら)を支援して唐・新羅(しらぎ)連合軍に敗れ、敗戦後、唐・新羅軍が日本に侵攻してくるのに備え、福岡の大野城や水城をはじめとして全国に朝鮮式山城の砦を作ったため、鬼ノ城もその一環で築かれたものではないかと推測されています。

大和朝廷は、百済から亡命した「渡来人」と呼ばれる朝鮮人集団の技術継承を受けて朝鮮式山城を築城しましたが、この渡来人が「温羅」と呼ばれる異国の鬼のモデルになったと考えられます。鬼ノ城の中には、渡来人が伝承した製鉄の技術を生かした鍛冶場の跡も残っています。

ちなみに桃太郎の発祥の地は、全国の自治体が名乗りを上げていますが、岡山県、岡山市は、戦後から桃太郎発祥の地であることを県外に強くPRしていて、岡山のお土産として有名な「きび団子」についてもこうした広報活動の一環として、戦略的に展開されてきたものです。こうした活動の甲斐もあって、桃太郎発祥の地として、皆さんが思い浮かべるのはやはり「岡山」になっているのではないでしょうか。

<JR岡山駅前に立つ桃太郎の像(岡山市公式HPより)>
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■見どころ

標高397mの鬼ノ城山のすり鉢の外周に約3キロの城壁を築いた巨大な山城で「神籠石式山城」(こうごいししきやまじろ)と呼ばれます。

<鬼ノ城ジオラマ(ビジターセンターにて)>
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戦国時代より約千年も前の古代に山の上にこれだけの要塞を作り上げたというところにとてもロマンを感じます。また、記録も一切残っていない謎の城という部分にワクワクします。

しかし「戦国時代でも十分に通用するのでは?」と思えるほど堅固な造りの城となっています。

ぜひ戦国とは違った古代ロマンに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
何も遮るものが無く、迫るように間近に見える吉備平野の景色も堪能できます。

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■写真&散策記

残念ながら本日はあいにくの雨ですが、せっかく大阪から岡山まで泊まりで来たので頑張って登城することに。

駐車場までは車のすれ違いも困難なほど狭い道もありますが、山上のビジターセンターは綺麗に整備されていて駐車場も70台のキャパがあります。
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鬼ノ城ビジターセンターは鬼ノ城の成り立ちから構造、復元方法まで詳しく解説されているので、ぜひ登城前に訪れたいところです。(百名城スタンプもココにあります)
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さて、カッパを着込んで万全の備えで登城路へ。
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メインの西門あたりだけ行って戻るコースもあるみたいですが、折角なので、散策を城壁に沿ってぐるっと一周する「鬼ノ城1週コース」を周ることに。
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まず最初に現れるのは学習広場と呼ばれるウッドデッキです。
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学習広場には解説板がある他、鬼ノ城の城門が良く見えます。
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学習広場から5分ほど歩くと城門が見えてきます。
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鬼ノ城観光の最もメインとなる西門跡です。
古代にも関わらず12本の柱の跡がくっきりと判明するなど、極めて良好な状態で保存されていたものです。
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西門別の角度から。
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この日は天気が悪いので残念ですが、うっすらと吉備平野の景色が見えます。
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西門内部。
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西門内側から。
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城壁の下には敷石と呼ばれる基礎が敷き詰められており、城全体で数千トンに及ぶ重さになります。
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鬼ノ城はすり鉢の周囲にハチマキを締めたように3kmに渡って高さ6mの城壁で囲まれてました。
城壁で囲まれた城内の規模は30ヘクタールもあり、日本最大の山城と言われる高取城の全城郭面積6ヘクタールの約5倍もの面積があることになります。
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城壁は城内の要所6か所に石垣が置かれていますが、基本的に版築土塁(土を少しずつ入れて突き固めながら築き上げた土塁)となっています。
西門土塁の復元にあたっても、古代と同じように地元の住民を動員して少しずつ突き固めながら作り上げたとの事です。
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西門を後にして、すり鉢を反時計回りに一周することにします。
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こちらが第一水門跡です。
鬼ノ城の水門は6か所に築かれ、上部に土塁、下部に石垣を積んで下部の石垣から排水していました。
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第二水門跡には、排水口があります。本日の雨もあって実際の排水を見ることが出来ました。
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第二水門の排水の様子。
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城壁の外側からは遮るものなく、吉備平野を間近に望むことが出来ます。
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南門跡です。
こちらも12本の柱跡が確認されており、西門といずれが正門であったか意見が分かれています。
個人的には、南門は吉備平野の正面に向かって立っているので、正門はこちらかなと・・・
とても興味深いです。
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敷石による通路を抜けながらさらに東に向かいます。
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第3水門のあたり。
このあたりもとても眺望が良いです。
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東門へ。
それにしても巨石がゴロゴロしています。
石垣を作る石材には困らなかったことでしょう。
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東門に直接下りていく道は災害のため通行止めになっていたので、迂回して向かう事に。
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鍛冶場跡。ここで朝鮮半島からの渡来人が製鉄をされていたのでしょうか。
9基の炉が建っていました。
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東門跡
西門や南門と比べるとやや小ぶりで低い位置にあります。
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東門にも巨石がゴロゴロとしています。
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東門からも二番目のメインである屏風折れの石垣が小さく見えます。
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鬼ノ城二番目のメインである「屏風折れの石垣」です!
個人的にはこちらが鬼ノ城の最大の見せ場だと思っています。
西門だけでなく、一周コースにした甲斐があったと感じた瞬間です!
よく古代にこんなに高いところにこれだけの高石垣を積み上げたものです。
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吉備平野が遥か向こうに見えます。
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鬼ノ城の案内板。
温羅(渡来人)の居城であったとされています。
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温羅遺跡の碑。
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屏風折れの石垣を出て、今度は北に向かいます。
右側は土塁の跡です。
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北門跡
東門と同じく、西門・南門に比べて小ぶりな門です。
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排水溝も再現されています。
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北門外側から。
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北門を後にし、南下します。
このあたりは「礎石建物群」といって、建物跡が多数あります。
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城内は30ヘクタールもあったので、きっと多くの人が広々と居住できたことでしょう。
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そのまま城内の中心部からまっすぐ西に向かいます。
鬼ノ城山の山頂部が見えてきます。
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最も高いところということで、のろし場の跡があります。
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鬼ノ城の山頂。
山頂より、南側の城壁沿いの方が眺望は良いです。
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西門跡に戻ってきました。
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偶然にも岡山空港に着陸する飛行機と西門とのショットが撮れました!
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最後に「角楼」です。
角楼は城壁の最も死角となりやすい尾根沿いに城壁を長方形に張り出し、防御機能を高めたものです。
西門と並んで城内で最も防御が強固なゾーンとなっています。
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角楼は上に上がることもできますが、上に建物が建っていたのかどうかは不明です。
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角楼を後にして再び駐車場に戻ります。
これにて散策終了です!
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■公式パンフレット

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■あわせて巡りたい

・吉備津彦神社
  桃太郎のモデルとなった吉備津彦命が祀られている神社です。
  鬼ノ城山から30分程度で行けます。

■城データ
  • 城名        鬼ノ城<日本百名城No.69>
  • 種別        山城
  • 登城日       2019年3月10日(日)
  • 住所        岡山県総社市黒尾1101-2(鬼ノ城ビジターセンター)
  • 電話番号      0866-99-8566(鬼ノ城ビジターセンター)
  • スタンプ設置場所  鬼ノ城ビジターセンター
  • 公式HP      鬼ノ城公式HP
  • 入場料       無料
  • 駐車場       無料
  • 所要時間の目安   2時間半程度
  • 混雑度       小
  • 注意点       トレッキングに適した服装(長袖・長ズボン+靴)で。
  ※管理人が登城時の情報です。登城の際は必ず公式HPで最新情報をチェックして下さい。

■管理人の勝手な評価

~城として~
  • 難攻不落度     ★★★★☆(高い城壁に囲まれた巨大な要塞です)
  • 歴史に浸れる度   ★★★★★(古代ロマンに思いを馳せましょう)
  • 他では見れない度  ★★★★★(他では決して見れません)
  • 総合評価      ★★★★★
~行楽地として~ 
  • アクセス性     ★★☆☆☆(結構狭い道を車で登ります)
  • 登城のしやすさ度  ★★☆☆☆(軽いトレッキングです)
  • 分かりやすさ度   ★★★☆☆(復元や解説など充実しています)
  • 景観度       ★★★★★(吉備平野が迫ってくるように見えます)
  • 女性と行ける度   ★★★☆☆(女性にもおススメです)
  • 総合評価      ★★★★☆

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