■レビュー
戦国時代に、安芸の弱小領主から中国地方の覇者に成り上がった「毛利元就」の幼少期からの半生を描いたドラマです。
毛利家といえば、戦国時代の初期において、北九州と中国地方の西側を領有する大内氏と、中国地方の東半分を支配する尼子氏という二大勢力に挟まれた、安芸国の中でもさらに小さな「国人領主」という吹けば一瞬で飛ぶような存在でした。
<戦国時代初期の中国地方勢力図>
そんな中から家督を継いだ元就は、数々の謀略を尽くして中国地方の覇者となっていきます。
現代で言えば、地方の町工場や零細企業が、グローバルな企業にまで発展していくようなものです。
まずはドラマのオープニングですが、題字は実際の元就の書状から取ったものです。
オープニングの曲は、なんかダラダラとしていて抑揚がなく、管理人的には今一つでした。
このあたりも、後程出てくる元就の「ぼやき癖」に代表される、はっきりとしない元就の人物像を表現しているのかもしれません。(あくまでこのドラマの中だけでの人物像ですが・・・)
ドラマは、毛利家当主が元就の父・弘元の代から始まり、毛利家の領地が夜中に何者かに侵入されるところからスタートします。
元就の父は、同じく大河ドラマ「独眼竜政宗」では政宗の側近で切れ者の「片倉小十郎」を演じていた西郷輝彦ですが、このドラマでは、いかにもどっちつかずで冴えない領主役を演じています。
<合議の場で、領主たちの板挟みで悩む元就の父・弘元>
毛利家は、国人領主といってもさらに小さな領主たちの寄せ集めであり、一人では何も決められず、配下の領主たちの顔色をうかがいながら、「合議」によってしか物事を決せられないというのが特徴です。
しかも毛利家は、二大勢力に囲まれていることから、家中は、桂広澄を筆頭とした尼子派閥と、井上元兼を筆頭とした大内派閥に分かれています。
<尼子派重臣・桂広澄を演じる草刈正雄>
真田丸を見た後なので真田昌幸にしか見えませんが、とても若くて男前です。
1話目の最初では、毛利家の領地に侵入したのが尼子軍ではないかという疑惑について、重臣・桂広澄と井上元兼が言い争いとなり、当主・弘元が板挟みとなっている様子が描かれています
実際は、尼子家当主・経久がちゃっかりと毛利領内に侵入していたというのが真相です。
このとき、幼少期の元就(松寿丸)が初めて尼子と対面します。
経久は一目で元就(松寿丸)の器量を見抜き、元就もまた、以後経久を自身の謀略の師と仰ぐようになります。緒形拳演じる尼子経久はかなりのシブさです。
かわってこちらは山口を拠点とする大内家当主・義興です。
細川俊之が演じていますが、こちらもかなりいい味出しています。
ワイルドな尼子家と異なり、大内家はかなり京マニアです。
元就はこれらの巨大勢力を打ち破って中国地方統一を果たしていくのですが、その偉業ぶりとは打って変わって、元就はノムさんも真っ青な「ボヤキ癖」に代表される「ダメ男」としても描かれています。
特に妻である美伊の方の前でのボヤキはひどく、イラっときた美伊の方の側近にまでダメだしされる始末。
「毛利元就」という人物は、弱小勢力からのし上がるためには仕方ないとはいえ、かなりエゲつない謀略を使って中国地方を制圧していきますが、史実でのやり方があまりにもひどいため、ファミリードラマ的かつコメディータッチに描くことで、毒を中和していく必要があったのかと思います。
他の戦国大名で、謀略戦で有名なのはやはり「武田信玄」かと思いますが、大河ドラマ「武田信玄」のなかで、信玄は血も涙もない人間として描かれています。元就は、やっていること自体は信玄よりエグいのに、視聴者にそのように感じさせないように描かれています。
武田信玄が放送されたのが1988年、毛利元就が1991年ですが、3年でこれだけ大河ドラマのタッチも変わってしまうというのが時代の流れを感じました。(放送コード的なものもあるのでしょうか?)
「武田信玄」のような毒々しさが無いところが、やはり戦国大河としては管理人は少し物足り無さを感じてしまいました。
とはいえ、時代の流れによって、ストーリー展開がとても分かりやすく工夫されていて、テロップや解説なども頻繁に織り込まれるようになるなど、毛利家を全く知らない戦国初心者でも、歴史を学びながら楽しく視ることができるという点においては、昔の大河ドラマより進歩していると感じます。
<元就が息子たちに三本の矢を折らせる有名なシーン>
最後は、第二次月山富田城の戦いにおいて、尼子家当主・義久(中村獅童)が開城・降伏して終わる・・・はずなのですが、なんとこの時点でまだ49話で、まだ50話が残っています。
50話の内容は、管理人的には尺合わせをミスったとしか思えないヒドい内容でしたが、ここでは書けないため、興味のある方はぜひドラマをご覧ください。
中国地方きっての猛将であるはずの山中鹿之助は、終盤あたりにやっと登場して、ほとんど活躍シーンもなく終わるというひどい扱いです。
最後に主演の俳優についてですが、青年期以降の元就は中村橋之助が演じています。
少年期が森田剛だけに、青年期になった瞬間、少し男前度が下がった感が否めないです。(失礼)
もう少し顔立ちが似た俳優を探せなかったものなのでしょうか・・・
しかし、晩年になるにつれて味わいが出てきて良い感じになっていきます。
ちなみに、中村橋之助は「武田信玄」では徳川家康役を演じていましたが、役としては青年期の家康の方が合っていたように管理人的には感じました。
<少年期の元就(松寿丸)>
↓
<青年期の元就>
↓
<壮年期の元就>
↓
<晩年の元就>
色々書きましたが、中国地方の戦国史を扱った数少ない映像作品なので、ぜひご覧いただき元就の謀略の半生に思いを馳せてみてください。
■あわせて巡りたい
・月山富田城(日本百名城No.65)
第一次、第二次月山富田城の戦いの舞台になるなど、ドラマのなかでも頻繁に出てきます。
日本屈指の難攻不落の山城をぜひご自身の足で登ってみてください。
・吉田郡山城(日本百名城No.72)
いわずとしれた毛利家の本城です。
元就が若いころに城主を務めた多治比猿掛城とあわせてどうぞ。(近いです)
■ドラマデータ
- ドラマ名 毛利元就
- 原作 永井路子
- 脚本 内館牧子
- 主演 中村橋之助
~戦国ドラマとして~
- 歴史に浸れる度 ★★★☆☆(ファミリードラマ感が少し強すぎかも・・・)
- 他では見れない度 ★★★★☆(毛利元就にスポットをあてた数少ない作品)
- 総合評価 ★★★☆☆
- 分かりやすさ度 ★★★★★(地図やテロップが多くて分かりやすい)
- 女性と視れる度 ★★★★☆(どちらかというと女性向け作品かも?)
- 総合評価 ★★★★☆
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