■概要
戦国時代において、稀代の智将として名高い黒田官兵衛(如水)の生涯を描いた作品で、近年失われてきた大河ドラマの「重厚感」をしっかりと取り戻してくれた一作です。
主演はジャニーズの岡田クンです。
おそらく本物の黒田官兵衛はこんなにイケメンではなかったかと思いますが、彼の卓越した演技力が上回って余りある仕上がりになっています。
管理人が考えるこのドラマの特色は、「俳優陣が素敵」「史実に忠実」「幼少期のシーンが短い」の3点です。
まず、俳優陣については、「独眼竜政宗」や「武田信玄」など大河の黄金期には到底かないませんが、現在採用しうる最大限の俳優を当てています。
主演の岡田クンは言わずもがなですが、主演としてのスター性・ルックスを持ちつつ、自称・歴史オタクである彼は現代における大河ドラマの主演に最適でしょう。また、青年期は、ただ単にイケメンですが、荒木村重によって1年間土牢に監禁された後の官兵衛は、良い具合にジャニーズの爽やかさが取れて、逆に陰があって凄みの増した異形の軍師・官兵衛像を醸し出せています。
特に、39話において、天下人となった秀吉が、自身の誹謗中傷の落書きをした疑いのある者全員を処刑したことを諫めるシーンは、中期・官兵衛の真骨頂が出ています。
<前期官兵衛(元服直後)>
後期は、出家して「黒田如水」となりますが、がんばってメイクで年寄りっぽくしているものの顔とお肌が若すぎて結構不自然でした。特に最終話の官兵衛が死ぬ間際のシーンなどは絶対に泣かせるシーンなどはずですが、「いやいやまだ死なんやろw」って思ってしまって残念ながら泣けませんでした。もう少しメイクと演出を頑張っても良かったかもしれません。まあ一人の役者で青年期から臨終までを描く大河ドラマの限界、いやイケメンの限界か・・・
あとの主要な脇役は、大河ドラマ「秀吉」で主演を張った竹中直人や、73年の大河ドラマ「国盗り物語」で若き日の家康を演じた寺尾聰など、安定感のある俳優で固められていて、十分に見応えがありました。
<竹中直人演じる豊臣秀吉>
<寺尾聰演じる徳川家康>
前半の方の話で最も光っていたのは、やはり田中哲司演じる荒木村重だったかと思います。
官兵衛と初めて出会った頃は豪快な武将だったのが、信長に反旗を翻した後は次第に猜疑心に蝕まれていく様子を巧みに演じています。荒木村重のイメージが田中哲司で固定された方は多いかと思います。
<信長に反旗を翻し、説得に訪れた官兵衛を幽閉し有岡城に立て籠もる荒木村重(田中哲司演)>
そして、有岡落城後は脱走し、その後秀吉の御伽衆として復活しますが、復帰後の名前が「道糞(どうふん)」になっていたのはびっくりしました。自分が守る城を脱走して生き延びるようなやつは「道端に落ちているクソと同じレベル」という意味だそうですが、「クソ」って・・・
その後、道糞改め道薫(どうくん)になりますが、もはや心を失ってしまったような演技も見事でした。
個人的には江口洋介演じる信長は、見た目的にはとてもはまっていると思うのですが、「部下は道具と同じ」とまで割り切るキャラ設定がちょっと単純すぎて少し残念でした。もう少し人間味を持たせてもよかったと思います。
春風亭小朝演じる明智光秀も、どうもイメージが違いました。
光秀ってもう少しスマートな智将のイメージがあるので、落語家を当てるというのはちょっと・・・個人的には「麒麟がくる」で、シュッとした人が光秀役になってほっとしております。
あと、「史実に忠実」というのは、これは良くも悪くもですが、史実に沿って淡々とストーリーが進んで行く感じです。架空のキャラクターも出てきませんし、某ドラマのように最終話で主人公に地獄めぐりをさせるようなこともありません。
逆にいうと、非常に卒の無いドラマに仕上がっていて少し面白みに欠ける部分もあるかもしれません。1話から最終話までずーっと史実通りに進行して、最終話の最後で、官兵衛の妻・テルが縁側に座って「殿、良く生き抜かれましたなあ」と回想の官兵衛に向かって呟いて終わるという非常にあっさりとした終わり方でした。大河にアクの強さを求めている方には少し物足りなかったかもしれません。
若干パンチの強さを感じたのが、松永久秀役にミッキーカーチスを使っているところでした。
今まで久秀役を演じた人は数多くいれど、外タレ(とはいえほぼ日本に馴染んでいますが)を持ってきたのはこのドラマが初めてかもしれません。
<ミッキーカーチス演じる松永久秀>
「ノブナガ、ヒラグモハワタサン!」と言って爆死します。
最後に、「幼少期のシーンが短い」というのは、このドラマでは幼少期はわずか1話(!)しかありません。ものによっては幼少期が何話も続く大河ドラマが多くある中で、この割り切り方は素敵です。
以上、大河ドラマの軽量化が進む現代において、とても見応えのある大河ドラマでした。
すべての戦国ファンにオススメの映像作品です。
■あわせて巡りたい
中津城
官兵衛が秀吉により豊後国(大分)12万石を与えられて本拠地とした居城です。
官兵衛が関ヶ原の動乱を機にこの地からいかに天下を狙ったかが体感できるお城です。
有岡城
信長に反旗を翻した荒木村重が、説得に訪れた官兵衛を一年間土牢に幽閉した城です。
今は駅前にひっそりと遺構を残すのみとなっています。
- ドラマ名 軍師官兵衛
- 種別 大河ドラマ
- 視聴完了日 2020年5月23日(金)
- 所要時間の目安 2,250分程度
- 歴史に浸れる度 ★★★★★(史実に忠実で重厚感も十分)
- 他では見れない度 ★★★☆☆(卒のない作品に仕上がってます)
- 総合評価 ★★★★☆
- 分かりやすさ度 ★★★★★(内容はとても分かりやすく作られています)
- 女性と視れる度 ★★★★☆(岡田クンのイケメンを堪能できます)
- 総合評価 ★★★★☆
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